油断すると「いっそ一思いに殺せ」とか口走ってしまいそうだ。
全身から変な汗が出てる。
本開店したら俺、脱水症状になるんじゃないか？

手ごろな岩を目の前に、正眼の構え。
右足を一歩踏み出し、遅れてくる右腕に全体重を乗せる。
前回の真っ直ぐな軌道ではなく、曲線を描かせ、巣食いあげるように……撃つ！

「でぇええええいやあああああっ！！」

ボコッといい音こそなるが、完全粉砕までは遠い。
やはり血を噴出す拳。
筋肉が足りないのか、撃ち方が悪いのか。

別の岩に視線を移し、持ってきた荷物の布を解く。
出てきたのは一本の大剣。
両刃のバスタードはなく、敢えて片刃のバスターにしてもらった。
この方が性に合っている。
そういう気がしたからだ。

先程と同じように岩の正面で構える。
体重の力も遠心力も利用できないよう、斜め上に斬り上げる。
自分の力が見たいからだ。

「しぇええい、やああああっ！！」

振り上げる。
刃が岩の中心部までいった時だ。

　　　　　バキッ

いやな
　　　　　　おとが
　　　　　　　　　　　　した


ホスト部始動に宝玉戦は目前。
いよいよ忙しくなってきやがった！

だがこんなところでヘタれているわけにもいかねぇ！
ここからが始まりだ！！
全力込めて突っ走るだけよ！

そうそう、切り札を使う練習もしておかねぇとな！

虚空に繰り出す正拳三発。
気合を入れる。
そして大岩を正面に構え、拳を振りかぶる。

「せいやああああああぁぁぁっ！！」

大岩は見事に割れ……たりはせず、ただヒビが入っただけだった。
岩の硬さに負けて、血を噴出す拳を見る。
昔はもう少し頑丈だった気がするんだが、衰えたか。
また暇を見つけて鍛え直す必要がありそうだ。



水の宝玉を探して……何日目かはしらねぇ！
ホストの話ばっかしていたが、探索にも手を抜いちゃいねぇぜ？

長い砂地を歩いて見つけたのは次なる魔法陣。
辿り着くには２日ってところ。
そして立ち塞がるは貝殻二枚に蟹が一匹。
槌を片手で一回し。

さぁて、今日は海鮮鍋といくかぁ！？

ただいま俺、亀闇鋼は人生最大のピンチを迎えていた。
最大ではないと思うが……いや、最大ではないと思いたい！
この際だからぶっちゃけようと思う。

……これ俺のモノローグだよな？誰に遠慮してんの俺？
まぁいい！細かいことは気にしない！！


実は、ホストで誘える知り合いがいない。


あ！ってめ、この笑いやがったな！？
割と真面目に悩んでんだぞ！？
「知らない人を勧誘しろよ」とか思うかもしれないけどな！？

あれだぞ！？
本当は女性と喋るだけで心臓バックンバックンだぞ！？
モテない暦370年は伊達じゃねぇんだぞ！？
手ぇ握ったらぜってぇ汗まみれなんだぞ！？

ふー……ふー……よし、落ち着け俺。見苦しいだけだぞ俺。

でもあれだなー……多分凄えヘタレに見えるんだろうな。
いや、実際ヘタレなんだろう。


……………………

っ、ぁぁぁあああああああああ！！

うああああああああああああぁぁぁっ！！

しゃああああありぃやあああああああああああっ！！


さぁ叫べっ！！

参加を希望したのは誰だ！？　　　　　　　　　　　　俺だっ！！
サロンに大口叩いたのは誰だ！？　　　　　　　　　　俺だっ！！
スーツまで用意して気合十分なのは誰だ！？　　　　　俺だっ！！
髪型を寝る間も惜しんで弄ってたのは誰だ！？　　　　俺だっ！！
香水つけようと荷物漁っていた奴は誰だ！？　　　　　俺だっ！！
神に賢い自分を求めるなんてしてたのは誰だ！？　　　俺だっ！！

全部、俺だああっ！！

何を怯える！何を悩む！
気合と根性で乗り越え、やり遂げる！！
そうしてきたのは何処のどいつだっ！！

逃げるわけがねぇ！引くわけがねぇ！

誘える知り合いいねぇなら！突撃すりゃいいだけだろっ！！
気合も根性も伊達じゃねぇならそうしてみせろ！それだけだっ！！


……おし！

マイナス思考はここまでだ。
気合と根性……いけるなっ！？いや、いくぜっ！！

駄目もと上等でやってやるっ！！